『ケン1探偵長』
「おとなたちの気がつかない社会の事件は、みんなわが少年秘密探偵結社の仕事なんです」と、ケン1探偵長自身の説明の言葉があります。しかし、あまりこの言葉の意味にこだわらないほうがいいかもしれません。なかなか大冒険が多く、難問題も多いのです。

ケン1探偵長はしばしば女装をします。中でも阿蘇へ向かう列車の中の洗面所でのシーンは、とても描写がリアルで、アイラインを引き、口紅を差し、完璧な少女に変身してゆきます。
こういった描写へのこだわりには、作者のある種の執着心のようなものを感じてしまいます。動くものや姿が変ってゆくものに魅力を感じると、作者も言ってましたが、宇宙船などの乗り物の細かなディティールよりも、こうしたものを重視する人のようなのです。
女装が好きで得意なケン1探偵長ですが、でもなぜかすぐに人に気づかれてしまうことも多いのです。もし誰にも気づかれなければ、それだけ事件の解決も早くなるような気もするのです。けれど気づかれないことで満足するよりも、やはり変身してゆくプロセスのほうが、作者にとっても楽しく快い感覚なのでしょう。
ある犯罪事件にまきこまれたフランス人女優シトロンの男装シーンも、美しく哀れでした。
『バンパイヤ』 1966年

満月を見ると狼男に変身するトッペイ少年は、木曽の山奥の部落に住んでいたバンパイヤ一族の数少ない生き残りです。バンパイヤ一族やトッペイのことを知ったロックという男は、おのれの犯罪的野望のために一族を利用しようと考えるようになります。
狼男や狼女たちの変身自体もたいへんエロチックなものなのですが、ロックも女装によってたびたび「変身」し、そうしてトッペイ少年はロックとの拒みがたい関係におちいってゆくのです。
ケン1探偵長と同様、リアルな化粧シーンが描かれます。(2003/6)