「ピアノ」のお話

壁小学校二年生になってまもなくのころ、学校の音楽の時間に、先生が「家にピアノのある人!」と言ったので、何人かの女の子が手を上げたのでした。
私も手を上げると、先生はジロっと私のほうを見て、「卓上ピアノではありませんよ、本当のピアノですよ」と言いました。私はタクジョウピアノの意味がわからず、家にピアノがあると思っていました。こういう問題は家庭の経済状態と関わってくるためなのかどうか、先生はそれ以上は言いませんでした。

卓上ピアノとは、一種の玩具のピアノで、2オクターブほどの小さな鍵盤を押すと、それなりの音はするものでした。あとから思えば家にあったのはまさしくこの卓上ピアノです。姉と二人でしょっちゅう弾いて遊んでいたのでした。家ではそれをピアノと呼んでいました。
私はウソをついていたわけではないのですが、にせもの呼ばわりされたのでは、ピアノだって可哀想というものです。なにも好き好んでまがいものに生まれてきたわけではないでしょうに。

人に聞いた話ですが、ある男の子の家にはウルトラマンがいるそうです。人形や玩具ではなく、本物のウルトラマンだと、真面目な顔で言うので、友だちみんなで見に行ってみようということになったのだそうです。そのあとの話は聞きませんでした。


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